宍塚の蝶・2020年
1. 記録種数(成虫)
五斗蒔だより※1 に掲載された2020年の記録種数(成虫)は56種と例年なみであるが、今年は、久しぶりに新種が記録された。井上大成氏により、6月にクロミドリシジミ(茨城県・準絶滅危惧種)を採集したと報告があったのである※2(五斗蒔だより2021年1月号で既報)。日本産ゼフィルス※3 25種の1種で、この記録により、宍塚では、このうち7種※4 が記録されたことになる。
一方、毎年のように見ることができていたギンイチモンジセセリ、オオウラギンスジヒョウモン(いずれも茨城県・絶滅危惧Ⅱ類)などが見られなかったのは残念である。また、ここ数年アサギマダラが確認できず、寂しい気がする。
成虫は確認できなかったものの、オオムラサキ(茨城県・絶滅危惧Ⅱ類)やオオミドリシジミは、幼虫が確認されている。
なお、茨城県に分布する蝶は約110種とされている※5 ので、2020年の一年で、その半数ほどの蝶を観察できたことになる。
2. 月別の観察種
ここ数年と同様に、6月が43種と一番多くなっている。
1月、2月にも記録があるが、成虫越冬する種が存在するためである。
3. 次に期待される種
1979年以来※6 、宍塚の里山で記録された種は72種にのぼっており、今年のクロミドリシジミのほか、近年では、2014年にアカボシゴマダラ(特定外来生物)、2016年にオナガアゲハ、2017年にツマグロキチョウ(茨城県・絶滅危惧ⅠB類)が記録されている。
さて、次に観察が期待される種はなんであろう。
初記録では、シジミチョウ科のコツバメではないだろうか。春先の短い期間に出現。幼虫の食餌植物はアセビ、ヤマツツジ、ガマズミ、ボケなどで、つぼみを食べるらしい。
里山さわやか隊が手入れをしてくれて、環境が変って、すっかり明るくなったゼフィルスの森付近のヤマツツジ辺りで、ジュウニヒトエが咲く頃に、吸蜜しているのが見つかるかも知れない。(写真は、箱根で見た個体)
一方、当初の調査以来記録されていないアオバセセリ、ミヤマカラスアゲハなども見てみたいものである。
いると思って探せば、きっと見つかると信じて・・・
Yamasanae
※ 2020年に観察された蝶
【セセリチョウ科】ダイミョウセセリ、ミヤマセセリ、コチャバネセセリ、キマダラセセリ、オオチャバネセセリ、チャバネセセリ、イチモンジセセリ、【アゲハチョウ科】ジャコウアゲハ、アオスジアゲハ、アゲハ、キアゲハ、ナガサキアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハ、【シロチョウ科】ツマキチョウ、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、キタキチョウ、モンキチョウ、【シジミチョウ科】ウラギンシジミ、ゴイシシジミ、ムラサキシジミ、ムラサキツバメ、ウラゴマダラシジミ(茨城県・準絶滅危惧種)、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミ、クロミドリシジミ(茨城県・準絶滅危惧種)、ミドリシジミ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、ツバメシジミ、ルリシジミ、ウラナミシジミ、【タテハチョウ科】テングチョウ、ヒメアカタテハ、アカタテハ、キタテハ、ヒオドシチョウ、ルリタテハ、メスグロヒョウモン、ミドリヒョウモン、ツマグロヒョウモン、コミスジ、イチモンジチョウ、アサマイチモンジ、ゴマダラチョウ、アカボシゴマダラ(特定外来生物)、コムラサキ、ヒメウラナミジャノメ、コジャノメ、ヒメジャノメ、ジャノメチョウ、クロコノマチョウ、ヒカゲチョウ、サトキマダラヒカゲ 56種
参考 茨城県版レッドデータブック2016年改訂版P122以下
「チョウ目のうちチョウ類では,南方系種で本来本県では生息が確認されなかったムラサキツバメ,ナガサキアゲハ,ツマグロヒョウモンなどが近年本県に定着し,一方ではチャバネセセリ,クロシジミ,スジボソヤマキチョウ,ツマグロキチョウ,各種ゼフィルス類などは絶滅の危機に瀕している。県内に分布する約 110 種の中から 33 種を選定したが,初版時より 12 種も増えている。なお,ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)は福島県方面からの自然拡散で本県の八溝山周辺にも侵入してきた。」