2015年5月6日水曜日

2015/05/06 根本さんの甲虫ノート

5月6日(水)晴れ後曇り 16℃~24℃
 今日は、何んといっても先日みつけた太いクヌギ材での採集が中心となる。また、昨年の記録からするとツマグロハナカミキリ(ヤツボシハナの色彩変種注 )も出始めていてもおかしくはない。何にしても、これだけ絶好の材が用意されたからには、カミキリや中型のタマムシ科の甲虫が来るのが期待できる。
 ただし、ここ数年のトラカミキリを中心にした早出のカミキリは、5月下旬から6月中旬ころが一番のピークになっているので、全く来ていない可能性もある。AM11:00頃に現地に到着。宍塚側の入り口から2~3分程の所なので、すぐにネットを組み立てた。慎重に音はもちろん気配も消すような気持ちでクヌギ材に近づく。トラカミキリやミドリカミキリなどが多数来ていることを願いつつ見て回るが、あまり甲虫の気配はない。ざっと見渡してみても小型のチビタマムシ化コメツキ位しかいない。やはり早すぎたのかと思いつつも太いクヌギ材は後回しにして、直径20cm程の材から見て回る。(写真Ⅱ1) 


 もっとも日陰にある材を注視していると、材からカミキリらしきものが飛び立った。とっさにネットを振ると、うまい具合にネットに入った。よく見るとツマグロハナカミキリで、(写真Ⅱ2-3)・・3欠


 どうもこのケヤキのような材に産卵に来ていたようだ。ハナカミキリは、アカハナやヨスジのように針葉樹にさんらんするものもいるが、やはり、温帯照葉樹に産卵するものが多い。また、今まで何度も書いているが、この付近のほとんど陽光の当たらない材には、既に小型のアリがはいっていて、(写真Ⅱ4) この大池付近では、このアリの存在が伐採木の腐朽化をはやくしている。


 この太いクヌギ伐採木と共に周りのマダケも多数伐採されていて、タケには付き物のベニカミキリは、さっと見ただけでも30頭近く来ていた。(写真Ⅱ5-7、7欠) 

   

 今更採るようなものではないのが、一応、大きさの違う2頭を採集した。(写真Ⅱ8-9,9欠) 

 ゴマフカミキリもいたが、さすがにこれはそのままにしておき、トラカミキリを取るために定点採集をすることにした。材は太いものから枝まで多数あり、すべてを見渡すことは不可能なので、その中でも太いものの集まる付近で気配を消して待つこと1時間余り、PM1:00近くに、突然キスジトラカミキリが目の前の太いクヌギ材に飛来した。動きが早いうえに、材と材の間を移動するのでネットに入れ様がない。仕方なく、撮りやすいところへ出てくるのを待つことにしたが、10秒程で飛び去ってしまった。やっと来た目的の種なので、目の前で逃げられたのは何んとも無念だった。しかし、その数秒後、また新しいトラカミキリがすぐ近くに飛来した。しかも、それはあの見覚えのある赤い前胸をしているではないか。こんなところにいるはずはないと思いながらも夢中でネットを下に入れると、うまい具合に向うからネットに入ってくれたかのように簡単に採れた。半信半疑ながらも、絶対に逃がさないように慎重にネットの底へ落してから、ネットの外から覗くと、やはり、クビアカトラカミキリに間違いなかった。(写真Ⅱ10)


 神経を集中して毒管へと移し、コルクの蓋をしてやっと冷静になれた。あの相模湖から入る景信山(かげのぶやま)と藤野から入る陣馬山で見たことがあるだけの種だ。ここはルリボシカミキリが常にいる山としてだけではなく、クリストフコトラカミキリが生息している山としてマニアの間では有名な場所だ。しかも、14-15年前から毎年2-3回は行っているのに、クビアカトラに出会ったのは5回だけ、しかも3頭には逃げられている。ここには絶好の材があり、他のカミキリや中型のタマムシを採集している所だ。そのような場所でも珍しいクビアカトラがまさか大池にいるとは思いもしなかった。以前、中野の「むし社」で聞いた時も、近年では少ない種と言われた。あの付近の山はマニアの間ではカミキリの多いところとして知られ、ルリボシをはじめ多くのカミキリがいる。そのようなところでも少ない種なのにまさかこのような場所にいようとは思っても見なかった。興奮のさめやらないままネットを構えていると、また、すぐに型のいいキスジトラカミキリが来た。しかし、これも材と材の間に入ってしましどうしようもないので、仕方なく強引に手で掴んだが、バランスを崩した際によろけて、一度は捕まえたものの逃げられた。この3頭はいずれもPM1:00-2:30の間、陽光がまともに当たっている太い材が重なっている所に来たものだ。(写真Ⅱ12-13) 


  
 しかも、人家に近く交通量の多い土浦学園線から70-80mの所だ。深い山の質のいい伐採木でも珍しいと思っていたカミキリがこのようなところにいるのだから、この里山の生態系の豊かさには驚かされる。
 その後は薄い雲が出てきたためか、トラカミキリは全く来なくなり、お馴染みのゴマフカミキリが7頭いたが、そのままにしておいた。(写真Ⅱ14-15) 


  
 もうここもピークを過ぎたようなので、ツマグロハナカミキリでも探そうと思い、ハルジオンの多いオニグルミのある広場やプレハブ小屋付近を探したが、ハムシと小型のコガネムシくらいで(写真Ⅱ16-17)、大したものはいなかった。



 前回、多数いたヒメスギカミキリは1頭もいなくなっており、生態系を確実におさえるのはつくづく難しいと思った。(写真Ⅱ18) 

 一応、ツマグロハナカミキリの出現期をつかむ為にいつものコースをゲンベーヤマまで行ってみたが、サビキコリ(写真Ⅱ21)位で、ツマグロハナの姿はなかった。


 他の低木でそれらしきものを見つけ捕まえたが、姿のよく似たジョウカイボンだった。(写真Ⅱ22-23) 


 ツマグロハナは大池付近全般に広く分布しているが、どういう訳か花の多いところにいるとは限らない。ここ10年以上、5-6月の出現期を調べているが、ハルジオンに最も多く、ウツギ類や他の低木の花にも来る。しかし、どの辺の花に来るかといえば、意外に単純で、最も早く開花するハルジオンが大体50cm位になったときにまずこの花に来る。ハナカミキリは一般的には、AM10:00-PM3:00位が最も出現するが、ここでもほぼその時間帯に多い。ツマグロハナがハルジオンなどというどこにでもある雑草に来ると分かるまでは1シーズンに2-3頭見つければいい方だったが、この雑草は何処にでも咲いているので、今はコンスタントに見つけられる。ただし、やはり花の多いところに集まるから、オニグルミのある広場付近と果樹園付近に多い。それでもいないときは、果樹園前の用水路の反対側には、時期さえ間違えなければ、必ずいる。今日もその通りで、この群落には3頭のツマグロハナが来ていた。(写真Ⅱ24-26、欠26)  


 
 日照や花の育ち具合も同じなのだが、何故かここにはいる。論理的な検証はできないのだが、これが今までの経験上知り得たことだ。
 いつもは、その先の林の中のコースを行くのだが、この時期では大したものがいないのは解っているので、再び、クヌギの伐採木へと戻る。3時を少し回ったところなのだが、トラカミキリはおろかベニカミキリが2-3頭と交尾中のものも含め8頭のゴマフカミキリがいただけだった。(写真Ⅱ27-29) 


  
 こうした甲虫の出現時期というのは、ある程度は論理的説明はつくのだが、例外的なことが非常に多い。そこをある程度読んでいくのがマニアなのだが、そういう所は釣りによく似ている。時期、天気、気温、日照、エサとなる花や樹液の出具合、産卵木の状況など様々な事を考慮してもうまくいかない時はいかない。この辺の所は現場主義の我々マニアと研究者の決定的な相違なのかもしれない。
 いずれにしても、今日はクビアカトラカミキリ(本来は前胸が赤いのだからムネアカトラカミキリなのだが、和名なので仕方がない)に始まり、クビアカトラカミキリに終わった1日だった。


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